早期発見・早期治療のメリット

人間ドックなどの健診を受けるにあたって、『早期発見・早期治療』とお聞きになられたことはありませんか?
基本的に健診は健康な方や自覚症状がない方が受けることを想定しています。症状がないうちから体をチェックしておくことで、『気づいていない』病気の芽を見つけることができます。症状が現れてくるほど進行してしまう前に取り除こうという『予防』なのです。
では『早期発見・早期治療』には、実際のところどんなメリットがあるのでしょうか?
日本対がん協会では、次のようなメリットを提示しています。
  • メリット1:『救命の効果』
  • メリット2:『早期のがんを発見できる』
  • メリット3:『がん以外の病気も発見できる』
  • メリット4:『安心して生活を続けられる』
メリット1:『救命の効果』とは
早期に見つけ出し、治療に繋げることで、命を守る意味があるということです。
メリット2:『早期のがんを発見できる』とは
早期であれば治せる可能性が非常に高く、治療も軽く済むことが多いことからです。身体的・経済的・時間的負担が進行がんの場合よりも一般的に少なく済みます。
例えば、このシリーズでも以前の記事でがんの中でも増加しているとお伝えしている『大腸がん』。
大腸がんは研究が進んでいるがんです。比較的ゆっくりと進行するがん(例外はありますが、全体の経過は数年~10年ほど)であることがわかっており、検査方法も有効と認められたものがあります。これらにより早期発見であれば対策が取りやすく、完治も充分に期待できるがんであると考えられています。
図のように、大腸がんには進み具合を表す『病期(ステージ)』というものがあります。どの程度がんが大腸の壁に食い込んでいるのか(深達度)、転移しているかなどの要件で決まり、これによって『早期がん』なのか『進行がん』なのかが分かれます。
大腸がんは部位によって『結腸がん』と『直腸がん』に大別できます。
『ステージⅠで早期の大腸(直腸)がん』の場合と、『ステージⅡで進行の大腸(直腸)がん』であった場合とで、どのくらい身体的・経済的・時間的な負担が違うのでしょうか?
大腸がんの治療には図のように『内視鏡』『開腹』『腹腔鏡』、それ以外には『薬物療法』や『放射線治療』。大腸がんの治療では『内視鏡』『開腹』『腹腔鏡』が標準的なので『薬物』と『放射線』はここでは外します。
身体的な負担は?
『内視鏡』が一番負担が少なくてすみます。『開腹手術』はもちろん『腹腔鏡下手術』でも小さいながらも腹部に傷をつけることになるのに対し、内視鏡であれば肛門から挿入した内視鏡についた専用の器具で切除できるので、これは大きな利点です。
経済的な負担は?
→次の図のように、これも『内視鏡』が最も負担が少なくてすみます。
時間的な負担は?
→やはり『内視鏡』が優れています。また入院期間でも内視鏡が平均数日~5日ほどに対し、開腹や腹腔鏡の場合は7日~14日になりますので、社会復帰という点でも『内視鏡』は貢献できる手術方法と言えます。
『内視鏡』は身体的にも経済的にも時間的にも優れた治療法です。欠点があるとすれば、早期がんのような早い段階でしか行えないという点でしょうか。
このように、大腸がん1つとっても、如何に早期発見・早期治療が求められていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
メリット3:『がん以外の病気も発見できる』とは
がんになる前の病変が見つかることもあります。早めに見つけておけば治療に入る、もしくは本当に治療が必要なものなのかどうかをしっかり見極めることもできます。もちろん、がん以外にも病気はありますので、そちらについても治療に繋げられたり、今後生活する上で何に気を付けなければいけないかを知る機会にもなります。
メリット4:『安心して生活を続けられる』とは
問題がないとわかれば安心して生活を続けられるということです。何か病気が見つかっても、何に注意すればいいか、どんな生活を心掛ければいいのかを知る機会に繋げられ、必要以上に病気を恐れる必要がなくなります。

早期発見・早期治療のデメリット

早期発見・早期治療にはメリットがいくつもありますが、同時にデメリットについてもお伝えしなければなりません。先ほどの日本対がん協会では、次のようなデメリットを提示しています。
  • デメリット1:『がん検診の判定・診断の結果が100%正しいというわけではない』
  • デメリット2:『結果的に不必要な治療や検査を受けてしまうことになる可能性もある』
  • デメリット3:『検査によって身体に負担がかかってしまうことがある』
早期発見・早期治療にはメリットがいくつもありますが、同時にデメリットについてもお伝えしなければなりません。先ほどの日本対がん協会では、次のようなデメリットを提示しています。
デメリット1:『がん検診の判定・診断の結果が100%正しいというわけではない』とは
これも大腸がんを例にしますと、健診では便潜血検査を行うのが標準的です。採便するだけなので非常に安く簡便な上、死亡率減少効果を示す充分な根拠が研究で得られているほどなのですが、1度の検査では潜血(便に血が混じる)反応が出ない『陰性』と判断されることがあります。出血しないポリープや早期がんもあるためです。
対策は?
→毎年便潜血検査を受けることが推奨されています。欧米でも毎年受診することで33%も大腸がん死亡率が減少することがわかっています。他の部位でも同じことで、腫瘍マーカーに代表される血液検査だけでは発見しにくい肝臓などに対しては、腹部超音波検査も同時に受けることで、診断の正確性を上げることができます。
デメリット2:『結果的に不必要な治療や検査を受けてしまうことになる可能性もある』とは
上述した腫瘍マーカーと腹部超音波検査の併用受診の例が該当します。正確性は上がりますが、何もなかった場合には不要だったと思われることがあります。
対策は?
事前にお問い合わせいただいたり、かかりつけ医をお持ちの方は健診前にご相談いただいたりされることをお勧めいたします。
デメリット3:『検査によって身体に負担がかかってしまうことがある』とは
上部消化管X線(胃透視)検査の際に飲む造影剤や、上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査で内視鏡を挿入されたときの反射、他には乳房X線(マンモグラフィ)検査の際に乳房を圧迫する痛みなどが挙げられます。
対策は?
胃カメラの場合に鎮静剤をご希望いただいたり、マンモグラフィを乳腺超音波(エコー)検査に変えるという方法もあります。
如何でしたか?
健診にも長所と短所があります。メリットとデメリットの両方をご理解いただくことで、過信することも不安になられることもなくなります。
その一助となれれば幸いです。