基準値のみかた・考えかた
掲載の基準値は実際に健診機関で使われている値や各学会が示している値を掲載していますが、健診機関や測定法などにより異なることがありますのでめやすとして考えてください。基準値外が即病気ではなく、総合的な判断は問診・診察等とともに判断することとなります。
検査項目について
人間ドックで行われる検査項目は統一されているものではなく、この冊子に載っていなくても行われる検査があります。
血圧測定
血圧値によって心臓のポンプが正常に働いているか、または高血圧かを判断
基準範囲
ー最高血圧(収縮期)130mmHg未満
ー最低血圧(拡張期)85mmHg未満
◆検査結果に関連する病気・症状
高血圧症(脳卒中や心臓病、腎臓病の原因になる)、動脈硬化症など
聴力検査
音が聞こえにくくなっていないか調べます。
基準範囲
ー低い周波数(1000Hz)30dB以下
ー高い周波数(4000Hz)30dB以下
◆検査結果に関連する病気・症状
難聴(騒音性・先天性・突発性)、中耳炎など
心臓検査
心臓が血液を送り出すときに発する電気を読みとり、波形として記録します。
基準値ー異常なし
◆検査結果に関連する病気・症状
不整脈、狭心症、心筋梗塞、心肥大など
《心電図検査でよくみられる所見》
洞性除脈(どうせいじょみゃく)
心拍数が正常より少ない状態をいう。症状や程度によっては治療が必要な場合もある。普段から運動をしている人のなかには正常でも心拍数が少ない人もおり、その場合はとくに問題にならないことも多い。
右(う)脚(きゃく)ブロック
正常の人でも100人に1人が右脚ブロックを有するといわれている。
状態によっては通院や治療が必要な場合もある。
軸偏位(じくへんい)
心臓の刺激を伝える軸が右側、あるいは左側に傾いている。
軸偏位だけでは病気ではなく、特に問題はない。
平(へい)低(てい)T波
心電図波形のT波が平坦になった状態で、心筋梗塞や左室肥大ではそのT波のST部の異常を伴ってみられる。健康な女性や肥満でもみられることがある。
上室性期外収縮
ほとんどは症状なく命に関わるものもまれだが、動悸を感じる場合や頻繁に起きる場合は治療をすることもある。
心室性期外収縮
一般的にみられる不整脈のひとつ。本来、心臓の収縮が指令されない心室から、通常のリズムよりも早く発生した状態をいう。健康な人では興奮・喫煙・過労などで起こりやすい。心臓疾患の方でみられた場合、危険な不整脈に移行する可能性を検査する必要がある。
RSR’パターン
心電図異常として指摘されるが、正常でもみられることがある。失神や家族歴を伴う場合は医師への相談が必要。
高電位・低電位
心電図の波形が大きいあるいは小さい。ほとんどの場合、病的なものではない。
消化器検査
基準値ー異常陰影なし
◆検査結果に関連する病気・症状
食道・胃・十二指腸の潰瘍、がん、ポリープ
基準値ー異常なし
◆検査結果に関連する病気・症状
食道・胃・十二指腸の炎症、潰瘍、がん、ポリープなど
基準値ー異常なし
◆検査結果に関連する病気・症状
胃・十二指腸の潰瘍、胃がんなど
基準値ー陰性(-)
◆検査結果に関連する病気・症状
胃・十二指腸の潰瘍、胃がん、萎縮性胃炎など
基準値ー陰性(-)
◆検査結果に関連する病気・症状
大腸ポリープ、大腸がん、潰瘍性大腸炎、痔、胃・十二指腸の潰瘍など
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の痕のことで、以前に潰瘍があったことを意味する。新しい潰瘍ができることが予想される場合は、内服などの治療が必要になることもある。
胃ポリープ
胃にできるポリープのことで良性の場合が多いが、場合によっては経過観察が必要になる
胃粘膜下(か)腫瘍
胃粘膜の下の層から発生した腫瘍のことで、病変が大きくなるにつれ、胃の内腔に突出し隆起を形成したり表面にくぼみや潰瘍を形成することがある。病変は良性・悪性いずれの場合もあり経過観察または精密検査が必要。
十二指腸憩室
十二指腸壁の一部が外側に向かって袋状に拡張し、部屋(憩室)となった状態のこと。十二指腸憩室に感染を起こせば治療が必要になることもある。
食道裂孔(れっこう)ヘルニア
胃の一部が食道側に飛び出している状態のことで、症状がなければとくに問題とならない場合が多い。食道裂孔ヘルニアがあると逆流性食道炎になりやすくなる。
胆石
胆汁内のカルシウムやコレステロールなどの成分によって形成された石のこと。大きさや形状について経過観察が必要になる。
逆流性食道炎
胃内容物(多くは胃酸)の逆流により、食道胃接合部や食道下部にびらんなどの粘膜損傷が認められる。食道裂孔ヘルニアなどにより一過性に下部食道括約筋圧が低下することも大きな要因と考えられている。治療としては、プロトンポンプ阻害薬などの酸分泌抑制薬が非常に有効。
萎縮性胃炎
主にピロリ菌の感染によって引き起こされる胃炎を指す。進行すると内視鏡検査で粘膜下の血管が透けてみえるようになり、診断は容易となる。大部分は無症状であるが、軽度の消化不良または胃もたれや膨満感などの症状を呈することがある。高度の萎縮性胃炎は胃がん発生リスクが高く、定期的な内視鏡検査が必要。また、ピロリ菌除菌治療により胃がん発生リスクが低下することが期待されている。稀に、ピロリ菌感染と無関係な自己免疫性胃炎(A型胃炎)のこともある。
腹部超音波検査
超音波で腹部の臓器を確認します。
超音波検査では、超音波が入りにくい部分があるため、全域を観察できないことがあります。
特にすい臓は奥深い場所にあるため、見にくくなります。
基準値 異常なし
◆検査結果に関連する病気・症状
肝臓がん、肝硬変、胆管結石、胆管がん、すい臓がん、膵炎、腎臓がん、腎結石
子宮筋腫、子宮がん、卵巣がん など
脂肪肝
肝臓に脂肪がたまった状態のこと。内臓脂肪型肥満や飲酒が原因であることが多い。ときに肝硬変へ移行することがあるので、経過観察が必要になる。
肝のう胞
肝臓にできた水がたまった袋のこと。通常は無症状だが、大きくなったり複雑な形になっているものは精密検査が必要になることもあり経過観察が必要。
胆のうポリープ
人間ドック受診者の10%程度にみられるといわれる。多くは良性で経過観察のみを行うが、大きくなる場合は精密検査が必要になる。
胆のう結石
胆のう炎や胆管炎の原因となることもある。胆のう壁肥厚の所見がみられる場合や、結石の後方の胆のう壁が十分に観察できない場合には、悪性腫瘍との鑑別のため精密検査が必要になる。
腎石灰化
腎臓にカルシウムが沈着した状態のこと。腎機能に影響がなければ経過観察のみの場合が多い。
肝血管腫
頻度の高い肝臓の良性腫瘍。一部に大きくなるものもあるので経過観察が必要になる。
副脾
脾臓の近くにあり脾臓と同じ組織の1~2cm大の腫瘤のこと。多くの場合、病的なものではなく、治療が必要になることは少ない。
呼吸器検査
胸部にX線をあて、肺や心臓の病気、骨折や炎症、腫瘍などを調べます。
基準値 異常陰影なし
◆検査結果に関連する病気・症状
・呼吸器に異常・・・肺結核、肺炎、肺がん、肺線維症、肺気腫 など
・循環器に異常・・・心肥大、心不全、大動脈硬化症 など
《胸部X線検査でよくみられる所見》
胸膜肥厚
胸膜が厚くなった状態で、過去の肺炎などの感染症を示す場合が多い。場合によっては精密検査が必要になる。
脊椎側弯
脊椎が左右どちらかに曲がっている状態のこと
のう胞影
肺胞の壁の破壊や拡張により、隣接する肺胞と融合し大きな袋になったもので、一般には直径1cm以上のものをいう。
心陰影の拡大
心臓の陰影の横幅が胸の横幅の50%よりも大きい状態をいう。肥満、心不全、心臓弁膜症などの場合にみられる。
スパイロメトリーという機械に思いっきり息を吹き込み、肺活量(吹き出した空気の量)
を測定します。
基準値 %肺活量:80%以上
1秒率:70%以上
◆検査結果に関連する病気・症状
・%肺活量低下・・・肺結核、間質性肺炎、肺線維症、咳、痰、息切れ など
・1秒率低下・・慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、咳、痰、息切れ など
脂質異常症検査
総コレステロールの量を祖規定します。
基準値 140~199mg/dL
◆検査結果に関連する病気・症状
・高値・・・脂質異常症、動脈硬化症、甲状腺機能低下症 など
・低値・・・栄養吸収障害、肝硬変、甲状腺機能亢進症 など
善玉コレステロールと呼ばれるものです。血液中の悪玉コレステロールを回収します。
基準値 40mg/dL以上
◆検査結果に関する病気・症状
・低値・・・脂質異常症・動脈硬化症 など
悪玉コレステロールとよばれるものです。
基準値 60~119mg/dL
◆検査結果に関する病気・症状
・高値・・・脂質異常症、動脈硬化症、甲状腺機能低下症 など
・低値・・・肝硬変、甲状腺機能亢進症 など
体内の中でもっとも多い脂肪で、糖質がエネルギーとして脂肪に変化したものです。
基準値 30~149mg/dL
◆検査結果に関する病気・症状
・高値・・・脂肪肝、脂質異常症、動脈硬化症、甲状腺機能低下症 など
・低値・・・低栄養、甲状腺機能亢進症 など
総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値です。すべての動脈硬化を引き起こすコレステロールを表します。LDLコレステロールだけでなく、中性脂肪が豊富なリポ蛋白、脂質代謝異常により出現するレムナント(残り物)などを含み、動脈硬化のリスクを総合的に管理できる指標です。
基準値 90~149mg/dL
◆検査結果に関連する病気・症状
・高値・・・脂質異常症、動脈硬化、甲状腺機能低下症、家族性高脂血症 など
・低値・・・栄養吸収障害、低βリポタたんぱく血症、肝硬変 など
痛風検査
たんぱく質の一種であるプリン体から分解された老廃物の血液中の量を測定します。
基準値 2.1~7.0mg/dL
◆検査結果に関連する病気・症状
高値・・・高尿酸血症、痛風 など
糖尿病検査
糖とは血液中のブドウ糖のことで、エネルギー減として全身に利用されます。測定された
数値により、ブドウ糖がエネルギー減として適切に利用されているかがわかります。
基準値 99mg/dL(空腹時)
◆検査結果に関連する病気・症状
糖尿病、慢性膵炎、すい臓がん、ホルモン異常 など
過去1~2ヶ月の血糖の平均的な状態を反映するため、糖尿病のコントロールの状態が
わかります。
基準値 5.6未満
◆検査結果に関連する病気・症状
糖尿病 など
75gのブドウ糖を溶かした液を飲み、2時間後の血糖値を測定して糖代謝機能を調べます。
基準値 2時間値:140mg/dL未満
◆検査結果に関連する病気・症状
糖尿病、耐糖能異常 など
肝機能検査
血液中の総たんぱくの量を測定します。
基準値 6.5~7.9g/dL
◆検査結果に関連する病気・症状
・高値・・・慢性肝炎、多発性骨髄腫、脱水症 など
・低値・・・栄養障害、ネフローゼ症候群、肝硬変 など
血液中に含まれるたんぱく質のうちでもっとも多く、肝臓で合成されます。
肝機能障害の有無・栄養状態を調べます。
基準値 3.9g/dL 以上
◆検査結果に関連する病気・症状
栄養障害、ネフローゼ症候群、肝硬変 など
AST(GOTともいう)は、心臓、筋肉、肝臓に多く存在する酵素で。ALT(GPTと
もいう)は肝臓に多く存在する酵素です。おもに肝機能障害の有無を確認する際に調べます。
基準値 AST:30U/L 以下
ALT:30U/L 以下
◆検査結果に関連する病気・症状
高値(ALT<AST)・・肝機能障害、急性肝炎、アルコール性肝障害、肝硬変 など
高値(AST<ALT)・・肝機能障害、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝 など
ASTのみ高値・・肝機能障害、心筋梗塞、多発性筋炎、溶血性貧血 など
肝臓や腎臓・すい臓などに含まれ、肝臓の解毒作用に関係する酵素で、過度の飲酒により
数値が上昇します。おもに肝機能障害の有無を確認する際に調べます。
基準値 50U/L 以下
◆検査結果に関連する病気・症状
アルコール性肝障害、慢性
腎機能検査
アミノ酸の一種であるクレアチニンが代謝されたあとの老廃物のことで、血液中の量から
腎機能の障害の有無を調べます。筋肉量に比例するため、正常でも年齢や性別で差があります。数値が高いと、腎臓の機能が低下していることを意味します。
基準値 男性:1.00mg/dL 以下
女性:0.70mg/dL 以下
◆検査結果に関連する病気・症状
腎炎、腎機能障害、腎不全
クレアチニンの測定値をもとに年齢・性別から推算し、腎臓が老廃物を排泄する能力を
調べます。数値が低いと腎臓の機能が低下していることを意味します。
基準値 60.0mL/分/1.73㎡以上
◆検査結果に関連する病気・症状
慢性腎臓病(CKD)
たんぱく質が分解されるときにできる老廃物の一種です。尿中に排泄されますが腎機能に
異常があると血液中に増えるため、その量を測定します。
基準値 8~20mg/dL
◆検査結果に関連する病気・症状
高値・・・腎機能障害、脱水症、消化管出血 など
低値・・・低栄養 など
膵臓機能検査
膵臓や唾液腺から分泌される消化酵素の量を測定し、膵臓の障害の有無を調べます。
基準値 40~122 U/L
◆検査結果に関連する病気・症状
・高値・・・急性膵炎、慢性膵炎、すい臓がん、腎不全、唾液腺疾患 など
・低値・・・進行した慢性膵炎、すい臓がん など
血液の異常を調べる検査
全身の組織に酸素を運ぶ赤血球の数を調べます。
基準値 男性:400~539×104/㎣
女性:360~489×104/㎣
◆検査結果に関連する病気・症状
高値・・・多血症 など
低値・・・貧血 など
赤血球中に含まれるたんぱく質の一種を測定し、貧血などを調べます。
基準値 男性:13.1~16.3g/dL
女性:12.1~14.5g/dL
◆検査結果に関連する病気・症状
高値・・・多血症 など
低値・・・貧血 など
血液に含まれている赤血球の割合のことです。ヘモグロビンと同様に貧血などを調べます。
基準値 男性:38.5~48.9%
女性:35.5~43.9%
◆検査結果に関連する病気・症状
高値・・・多血症、脱水症 など
低値・・・貧血 など
MCVは赤血球の体積を表します。 基準値 85~102fL
MCHは赤血球に含まれる血色素量を表します。 基準値 28~34pg
MCHCは赤血球体積に対する血色素量の割合を示します。 基準値 30.2~35.1%
◆検査結果に関連する病気・症状
MCVが高値でMCHCが正常・・・ビタミンB12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血過剰飲酒 など
MCV、MCHCともに正常・・・・腎性貧血、溶血性貧血、急性出血 など
MCV、MCHCともに低値・・・・鉄欠乏性貧血、慢性炎症 など
体内に侵入してくるウイルスや細菌を退治する仕組みを免疫といい、その中心的役割を
果たす白血球の量を調べます。
基準値 3.1~8.4×103μg/dL
◆検査結果に関連する病気・症状
高値・・・白血病、心筋梗塞、細菌感染 など
低値・・・悪性貧血、再生不良性貧血、敗血症 など
出血した部分に粘着して出血を止める役割を果たす血小板の過不足を調べます。
基準値 14.5~32.9×104/μL
◆検査結果に関連する病気・症状
高値・・・血小板血症、鉄欠乏性貧血 など
低値・・・再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、肝硬変 など
感染症を調べる検査
細菌やウイルスの感染、けがや病気などによって体に炎症がおきると肝臓でつくられ
血中に増えるたんぱく質です。
基準値 定性法:陰性
定量法:0.30mg/dL 以下
◆検査結果に関連する病気・症状
発熱、リウマチ熱、間接リウマチ、細菌、ウイルス感染症、悪性腫瘍、心筋梗塞 など
梅毒の病原体やそれに対する抗体の有無を見分けます
ただし、結核、膠原病など梅毒以外でも陽性になることがあり、これを生物学的偽陽性と
言います。陽性の場合は区別するために精密検査を受けて下さい
基準値 陽性
B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスに感染していないかを調べます。
基準値 HBs抗原:陰性(-)
HCV抗体:陰性(-)
◆検査結果に関連する病気・症状
・HBs抗原が陽性(+)・・・B型肝炎
・HCV抗体が陽性(+)・・・C型肝炎
腫瘍マーカー
がんが発生したときに血液や尿中に増えることがある、特殊なたんぱく質やホルモン
などを測定します。がんの再発の発見などのために補助的に利用されます。
おもに消化器系や子宮がんなどの診断に、補助的に用います。
基準値 2.5 ng/mL 以下
おもに肝臓がんなどの診断に、補助的に用います。
基準値 10 ng/mL 以下
おもに消化器系のがんなどの診断に、補助的に用います。
基準値 37 U/mL 以下
おもに消化器系や卵巣・子宮のがんなどの診断に、補助的に用います。
基準値 35 U/mL 以下
おもに前立腺がんの検診や診断に用います。
基準値 50~64歳:3.0 ng/mL 以下
65~69歳:3.5 ng/mL 以下
70歳以上:4.0 ng/mL 以下
胃がんリスク検診(ABC検診)
胃がんを直接発見する検査ではなく、ピロリ菌感染の有無と胃粘膜萎縮の程度を測定し、
胃がんのリスクを調べます。ピロリ菌が陽性だった場合に除菌治療を行うかどうかは、
内視鏡で胃の状態をみてからの判断となります。
リスク分類
(認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構より)
乳房の検査(乳がん検査)
乳房やわきの下のへこみ、盛り上がり、しこりの有無などを調べます。
乳房に超音波をあて、触診ではわからないような小さなしこりの有無を調べます。
両方の乳房をX線で撮影し、腫瘍の有無や大きさ・形・石灰化の有無を調べます。